それでも尚、ひとりの身勝手が許されることはない

「なんでもかんでも嫌だ嫌だで通ると思うな!」
 M・Tを叱りつけるN・M師範の怒鳴り声が廊下を通じて玄関まで聞こえてくる。
「何か騒がしいっすけど、どうしたんすか?」
 ギリギリに帰ってきたくせに何の悪びれもない様子でS・Kが尋ねてきた。
「とりあえず、2階」
 私はいったんS・Kたちを講堂に避難させるよう手招きで誘導した。
「……実は、ちょっとM・Tが——」
 ごく僅かながら躊躇いはあったものの私は三人の年下に幼馴染の苦悩を話した。
「えー。何かと思えばあの優等生が仮病ですか」
 ここぞとばかりにT・Mが廊下で冷かしている声が講堂にいる私達の耳まで届いたが、事の詳細が明るみに出ていない以上は何も言えなかった。
「とにかく、そういうこと。詳しい事は本人に、いや、Nさんの方が良いかも。今も二人で係争中だから、ほとぼりが冷めてから聞いた方がいいよ」
 考えるのが嫌になって私は二階に上がると、電気も付けずに真っ暗な部屋の中で布団を頭から被った。
 ——今だけは、頼むから誰も入って来ないでほしい。
 日を追う毎に、だんだんと幼馴染みが赤の他人になっていくような気がした。ミュゼ 腕脱毛